人権放送 10月
 

10月の人権を確かめ合う日

 

「こだまでしょうか」

 これは、とあるCMでのフレーズです。2011年東日本大震災の後に、このCMがくり返し流され、大きな話題を呼びました。「こだまでしょうか」。「こだま」というのは、山びこのことで、山や谷で「やっほー」と叫ぶと「やっほー」と返ってくる現象のことを言います。

 

 この「こだまでしょうか」は、今からおよそ100年前に、金子みすゞという方が書きました。彼女のことは、3年生以上の人は、国語の教科書の「私と小鳥と鈴と」で学習したことがあるかもしれません。

 

 では、『こだまでしょうか』をちょっと読んでみたいと思います。


 

『こだまでしょうか』   金子みすゞ

 

「遊ぼう」っていうと

「遊ぼう」っていう。

「ばか」っていうと

「ばか」っていう。

「もう遊ばない」っていうと

「遊ばない」っていう。

 

そうして、あとで

さみしくなって、

「ごめんね」っていうと

「ごめんね」っていう。

 

こだまでしょうか

いいえ、誰でも。


 

 たった一言で、人は傷つく。たった一言で、人はうれしくなる。自分が心から優しく相手に話しかけていると、きっと相手も穏やかに話し返してくれる。ことばは山びこのように、人から人へと『こだま』します。自分のやった行動は、いいことも、よくないことも、そのままいつか、自分に返ってきます。投げかけられたことばや気持ちに反応するのは、誰の心でもそうです。「こだま」と同じです。

 

「やられたらやり返す。倍返しだ。」という言葉が流行ったこともあります。今から10年ぐらい前のことです。「負けないぞ」という気持ちは大切ですが、これは、意味を間違えるととんでもないことになる言葉だと私は考えます。

 

 例えば、おにごっこでイライラすることがあって、相手を蹴った。相手も蹴り返してきた。またイライラして、2倍の強さで相手を蹴った。すると相手も2倍の強さで蹴り返してくる。もっとイライラして殴ったら、相手も殴り返してきた。・・・このまま続けば、最後はどうなってしまうのでしょう。イライラは無くならないし、どっちも傷ついてしまいます。

 

 自分が、相手にしたことは必ずこだまのように、自分に、そのまま返ってきます。もちろんそれは、相手にも言えることです。でも、どうせ返ってくるなら、いいことの方がうれしいですよね。

 

 もし今何か、うまくいっていないなと思うことがあるなら、自分の普段のことばや行動をもう一度、見直してみませんか。何かヒントが見つかるかもしれません。